辻村深月『V.T.R.』を読了。読んで分からなかった語句の意味を調べたのでまとめて書いておきます。数字はページ数(文庫本)。以下ネタバレ、感想。
20 よがる
快感を声や表情にあらわす。「―・る声」(goo辞書)
40 ごちる
「独り言をいう」という意味の「独り言つ」(ひとりごつ)が、現代語風に「ひとりごちる」の形で用いられるようになり、「一人、ごちる」と分解されたもの。したがって一般的には単独での意味はない。(weblio)
97 雁首(がんくび)
人間の首や頭をいう俗語。「雁首をそろえる」「雁首を並べる」(goo辞書)
101 箱庭療法(はこにわりょうほう)
心理療法の技法の一つ。セラピストが砂を入れた箱と玩具 (がんぐ) を用意して、患者に箱庭作品を作らせる。作品を作る過程や完成した作品から患者の深層心理を読み取り、治療に役立てる。(goo辞書)
142 顰める(ひそめる)
不快や不満などのために、眉のあたりにしわを寄せる。顔をしかめる。「マナーの悪さに眉を―・める」(goo辞書)
164 デリンジャー
小型拳銃。詳しくはwikipediaへ。
166 据え膳
すぐ食べられるように、食膳を整えて人の前に据えること。また、その膳。「上げ膳据え膳」(goo辞書)
つまり、他人に出された飯をそのまま食べる、ということでしょうか。極端な話、毒をもられている可能性もあるわけで。あるいは、出された飯をそのまま食べるというのはプライドにも抵触する場合があるでしょう。当然金は払わない場合が大半でしょうから。
170 頭(かぶり)
あたま。かしら。(goo辞書)
———————————–
いやあ、面白かった。本当に。こんなに小説の世界に引き込まれたのは久しぶりです。早く続きが読みたい、という気持ちで次々と頁を捲ってしまします。最後の展開には鳥肌が経ちました。え?トランス・ハイってこいつなの?みたいな。面白かった。殺し屋が合法化されている世界なので、そういうSFチックな小説が好きな人には読みやすいかもしれませんね。
辻村深月の小説は、読む順番が大事だ、と言われています。その冒頭、つまり最初に「V.T.R.」を読め!という人もいるというのには納得しました。これは最初に読んでも良いかもしれません。200頁ありませんし、読みやすい。ただ、この作品が「スロウハイツの神様』に登場するチヨダ・コーキが書いた作品であるという位置づけには注意すべきでしょうね。書いた本人は辻村深月ですが。
読了した率直な感想としては、辻村深月さんってこんな文章も書けるんだな、と。現実世界を超越したファンタジーな世界。その世界観を最大限に引き立てるような小説も書ける人というのには驚きました。あくまで現実感に基づいた小説家(例えば、私達と変わらないような人が、東京などの世界にいきている)だと思ってましたから。こういう拳銃や、殺し屋が沢山登場するファンタジー・小説も書ける(そして面白い)のは流石です。
タイトル考察するならば、『V.T.R』のTとRは分かります。主人公とその元恋人であるTとRのことですね。Vはなんだろう?勿論、ペロッチに組み込まれていた記憶のVTRと掛けていることは分かるのですが。V.T.R.全てが登場人物だったら面白いな、と読んでいたのですが、小説の中にはVなる人物は登場しませんでした。そこが敢えて狙ったところであるのか??主人公が、最後殺しに行く人物がVなる人だったりしたら面白い。あるいは vengeance(復讐)の意味のVとか。
もうひとつ、最初に書きましたが、この小説が『スロウハイツの神様』の世界から飛び出してきた小説という位置づけであることがすごい。作り込み度が半端ないです。カバーの著者は辻村深月さんですが、頁をめくるともう一枚表紙があって、そこに「著者:チヨダ・コーキ」があります。裏表紙もそうですね。カバーに記載されている裏表紙と、頁をめくったところにある裏表紙が違います。あらすじも違うし。あくまで、これはチヨダ・コーキが書いた作品なんだと。そういう作り込みがされています。文庫本の解説も赤羽環だし。
さて、次は『スロウハイツの神様 下巻』を読みます。