埋込み型補助人工心臓 HeartMateⅡ

ご無沙汰しております。今回は父の容態について書きます。

父が突発性拡張型心筋症を患っており、それが原因でICUに緊急入院したことは前回の記事に書いたとおりです。当初の父は心臓そのものが弱っており、最早全身に血液を送る力が無いということから、心臓の動きを助けるような装置(PCPS,IABP)を埋め込む緊急時手術が行われました。幸いにも手術は成功し、多くの方の手によって、命を助けられた状況です。ご心配してくださった皆様、本当にありがとうございます。

オペを担当した先生曰く、PSPS,IABPという大型機械をつけた状態では血栓が出来やすいとのことでした。また血の流れが通常の状態とは異なるようになっており、身体にかなりの負担がかかるということから、2、3週間程度しか装置をつけられないということでした。そこで次の段階として、その大きな装置を外し、埋込み型の、代わりとなる機械を入れる手術が行われました。それが1週間前ほどのことです。

無事に手術は成功し、父を取り囲んでいた大きな機械装置はなくなりました。その代わり、父の胸には代わりとなる装置が取り付けられました。それが埋込み型補助人工心臓装置です。

これは心臓の動きを助ける埋込み型の装置です。心臓の役割、血液の流れについては、こちらに詳しく書いてありますが、つまり拡張型心筋症という病気の人は、左心室から大動脈に正しく血液が送れない状態なので、その血液の通り道をもう一つ作ることにより、それを助けてあげよう、ということのようです。

簡単に解説しますと、その装置は、心臓の左心室から大動脈に人工血管(透明なチューブ)が伸びています。その血液の流れ、つまり左心室から直接大動脈へ血液を機械で送ってあげる装置が埋込み型補助人工心臓(Heart Mate Ⅱ)です。

最初からIABPやPSPSの段階を飛ばしてその機械を入れればいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、現在の我が国の医療制度ではそれが出来ない模様です。埋込み型の補助人工心臓を入れるためには、まず大型の機械を取り付けて、段階を経てから移行しなければなりません。お医者さんが言っていましたが、もし出来るのならば最初から埋込み型補助人工心臓を取り付けたい、ということでした。

さて、埋込み型補助人工心臓装置の嬉しいところは、患者自身が日常生活を送れるということです。前述した大型装置とは違い、埋込み型なので、幾つかの制約があるものの、他の人と変わらず日常生活を送ることができます。

その制約とは何かというと、機械の電源供給です。当り前ですが、埋込み型といえど機械ですから、どこからか電源を供給してあげる必要があります。そのために患者自身(そして家族)が機械が停止しないように注意しなければなりません。機械の電源供給方法は2つあり、一つはモバイルバッテリー、もう一つはコンセントからの電源供給です。

この2つの電源供給方法が絶たれてしまうと、当り前ですが機械は停止します。停止すればどうなるか。ご想像の通り死に至ります。そのため、患者(親父)と同居者(母と私)には病院の専門家の講師からレクチャーを受けなければなりません。その講習も2時間×5回というもので、更に実技講習(例えば機械が停止した時にどのような対応をするべきか)があり、その後にテスト、口頭試問が行われます。かなり入念に行われます。

これが覚えるべきマニュアル(教科書)です。結構な厚さがあり、機械の名称、役割、異常信号の種類、意味、対処法といったことが書かれています。その他にも患者の日常生活、例えばお風呂の方法などが書かれています。親父が退院するためには、このマニュアルを患者本人と周りの人が覚えなければなりません。

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正直言って面倒くさいのですが、しかし、よくここまでたどり着けました。まだ道半ばですが、心臓移植というゴールに向かって是非頑張って貰いたいものです。これから先の事を書きますと、しばらくはこの埋込み型機械をつけた状態で過ごします。期間で言うと2-3年といったところでしょうか。その間に心臓移植の申請をして、移植を待つ、ということです。この埋込み型機械をつけた状態では、10年以上快適な生活を送られている方々が沢山いらっしゃるようで、一段落といったところでしょうか(65歳以下という心臓移植の年齢制限に引っかかる)。勿論、血栓が出来たり、何かの原因で機械が動かなくなったりしないように注意する必要はあるのですが。しばらくはこのマニュアルを僕も覚えなければなりません。今度はそれについて書きます。それでは。

2017-11-24|
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