自作PCの突然の逝去。享年2歳11ヶ月。

悲しいお知らせがあります。2年11ヶ月(およそ3年なので以下3年と書きます)前に自作したPCが壊れました。突然の逝去に言葉が見つかるはずもなく、誠に痛恨の極みであります。

どうしてPCが逝去したのか。結論から書くと、「マザボが壊れた」からです。なぜ壊れたのか。自然に壊れてしまった(製品寿命)のであれば諦めがつくのですが、原因はそうではありません。今回のPC故障はドライバの不用意なアップデートによるものです。某フリーソフトでPC内にあるドライバを検出して自動ですべて更新してくれるものがあるのですが、そいつでユーティリティ関連のドライバをアップデートした結果、マザボ内のパーツと干渉、結果としてブルースクリーンの連発でお釈迦になりました。PCリカバリも試しましたが、復元ポイントでのリカバリもエラーの連発、思い切って初期化を試したもののこちらもエラーの連発。ブルースクリーンにつぐブルースクリーンでマザボに負荷がかかり、お亡くなりになってしまいました。

マウスやキーボードを新しく購入したときに、PCに接続すると自動でドライバがインストールされますが(ホットプラグといいます)そのドライバと言えば分かりやすいでしょうか。ドライバーアップデートソフトでを使って普段はアップデートする必要のないドライバーまで無理やりアップデートした結果、マザボの部品がうまく動かなくなったようで、結果としてブルースクリーン→エラー連発→お釈迦という流れです。ドライバーとは、ものすごいざっくりと書くとPCとハードウェアを紐づけるためのソフトのことですが、ユーティリティ関連(たしか記憶域コントローラーだったと記憶している)のアップデートでババを引いてしまいました。

調べてみると、同じ原因でPCがお亡くなりになってしまった方が結構おられるようで、某フリーソフトの名前で検索すると口コミサイトで注意書きがされていたりします。そのなかで最も参考になったレビューが以下の通りです。

「所持しているシステムに、ハイエンド以上のパーツが搭載されていると、この種のユーティリティはユーザーコミュニティからのフィードバックによって情報の鮮度を保ち、障害状況を把握しているため、同じパーツを利用しているユーザーがすくない高級パーツを利用していると決して低くない確率で本来は利用できないドライバーなどが更新であたってしまう。例えば採用例の少ない高級なサウンドカードなどを搭載している場合などがそうである」

私が使っていたのは約10万円もした高級マザボでしたが、このマザボは999台限定だったのでユーザーが少なすぎることと、加えてハイエンドのパーツが搭載されまくっていたので、おそらく不用意なアップデートによって部品が動かなくなったのでしょう。このような条件でシステム関連のドライバーを無理やりアップデートしてしまうと中確率程度でシステムの故障を招くらしいです。とはいっても後の祭りなわけですが。

逆に、そういったフリーソフトでドライバーをアップデートをしたほうがよい場合はユーザーが多い売れ筋のパーツで組んであるPCの場合です。このような場合はユーザーが圧倒的に多いため、不具合があってもすぐに対応・修正されます。また変に高級なパーツを使っていないため、結果として大きな不具合が生じません。このような話を聞くと、変に安すぎても壊れやすいのですが、逆に高すぎても壊れやすいという話は納得がいきます。

バリューチェーンの話を考えるときに「スマイルカーブ」という概念が出てきます。縦軸に付加価値(事業収益)、横軸に事業連鎖を取ったときに、研究・開発、ブランド、設計デザイン、製造組み立て、流通、マーケティング、アフター(つまり製造の上流から川下の時間経過ライン)と見ていったときに中間の製造組み立ての部分が一番付加価値が低くなる(=原価率が高くなって事業利益が低くなる)というものです。この曲線が人の笑顔の口元に似ているということからスマイルカーブと言われていますが、PCの故障率にも同じことが言えます。縦軸に故障率、横軸に値段とすると、安かろう悪かろうのパーツを使っていれば故障率は跳ね上がりますが、優良な部品を使えば故障率は下がります。ただハイエンド以上のパーツを使っていると、前述したようにユーザーの圧倒的少なさによるフィードバックの減少や、部品の余計な機能による相互干渉が上がり、結果として故障率はまた上昇します。このことから、PCの故障率と値段は人の笑顔の口元のような曲線を描くのではないかと思われます。ただしこれは個人的な見解なので、きちんとデータを取ったわけではありません。

つまり何が言いたいかというと、不用意に高ければ高いほどいいかというとそうでもないということです。100万円をかけたPCや、ハイエンドのパーツを組み合わせたロマンしかない自作PCがユーチューブ等で散見されますが、作るまではいいんです。問題は作った後、きちんと動作しているかどうか。結局その後を動画で見ていたりすると、多くの場合故障したり、何かしら部品を不具合によって取り替えていたりします。つまりはそういうことです。ロマンはあるけど、故障率も跳ね上がる。PCの故障率は値段に比例して低くなっていくのではなく、スマイルカーブのようにミドルクラス~ややハイエンドクラスで最も低くなるのではないでしょうか。なぜならそのゾーンに位置するPCパーツは余計な機能がほとんどなく、純粋にいいパフォーマンスをするパーツで構成されているため、個々の故障率が少ない上にユーザーが多く、定期的にフィードバックによって不具合が修正されるからです。しかしそこを超えてハイエンド以上を求めてしまうと、余計な機能や相互干渉が徐々に上昇して故障率は上がります。更に何らかの不具合が出た場合はユーザーが少ないので対応が後回しにされます。今回の件でいろいろと勉強になりました。

かくいう私もいろいろな動画やコンテンツに影響を受けて10万円のマザボを買ってしまったのですが、そんなに値段分の性能は使えませんでした。たしかにスペックは申し分なかったのですが、その機能を活かしきれていなかった(持て余していた)のは事実です。例えば10ギガビットのLANポートがあったのですが、マンションの回線がそこまでのスピードが出ませんから、意味がないわけです。いくら家中のLANケーブルをカテゴリ8(STP問題は考えない)にしたところで、水道でいうところの元栓部分、入り口部分のスピードが遅かったらそれ以上のスピードは出ません。うちのマンションはIPV4で下り600Mbpsくらいでしたから。NASを構築していたわけでもありませんでしたし。もちろん、予めそれは分かった上でマザボは買ったのですが、結局のところ自己満足以外の何者でもありませんでしたね。スペックを持て余していました。

もう一つ教訓を書くとすれば「本格水冷のコスパの悪さ」です。これは本当に後悔しました。個人的な見解を申し上げれば、本格水冷なんてやる価値ないです。圧倒的にコスパが悪いし、メンテンスも超超超めんどくさいです。糞です。糞と言ったら糞に申し訳ないけど、それくらいコスパは無いです。ただ単に糞と書いても仕方ないので本格水冷がクソな理由を3つ書きましょう。

まず1つ。本格水冷はたしかに冷却機能が高いです。ただその冷却機能を必要とする程、一般家庭のCPUやグラボが爆熱かというと、そんなことはありません。空冷で十分です。もしくは簡易水冷。それで十分冷えます。あるいはケースを大型にしてエアフローを考えればそれだけで結構変わってきたりします。空冷でいえばアサシン3やノクチュアの大型空冷を使えばいいだけです。ユーチューブに検証動画も上がっているので、気になる方はそちらを見るといいでしょう。

2つ目。パーツの値段が高すぎます。冷却液をPC内に循環させるにあったってポンプ、ラジエーター、チューブ(ハードあるいはソフト)、ハードチューブならそれを曲げるための器具、更にはチューブを繋ぐための留具、水車(どれくらいのスピードで循環しているのかを計るための装置)などが必要になります。どれもが高いです。ポンプだけで2万とか3万します。それだけでローエンド~ミドルクラスのCPU買えたりします。一式揃えるならば10万円くらいは見積もったほうがいいでしょう。そして10万円あればローエンドのPCを組めるんです。本当に10万円をつぎ込む価値があるのか。その10万円でCPUのアップグレードやグラボのアップグレードをするのではなく、スペックが全然あがらない本格水冷に使って良いのか。胸に手を当てて考えるべきです。

3つ目。やはりユーザーが少なすぎることです。これが最大の不満点です。ユーザーが少なすぎるのでメーカーに対してフィードバックされません。そうなると「こういう不具合があった」とか「こういう部分を改善してほしい」といった声が届きません。仮に個人で頑張って声を上げたとしても、メーカー側からすれば顧客対応の優先順位はかなり低いです。10人の本格水冷の客に対応するのであれば、1000人の空冷の顧客に対応したほうがいいでしょう。もちろん金は払っているのでいずれは対応してくれるのでしょうが、それは1000人の顧客対応が終わってからの話になります。私自信も本格水冷を3年使いましたが、ポンプの出力調整がめんどくさかったり、ファンコントローラーをソフトウェアとして出して、それで本格水冷の微調整ができてほしかったのですが、結局個人で要望をだしても無視されるだけなので我慢していました。BIOSから調整するしかないんですよね。けれども毎回毎回BIOS入るのは面倒くさいし、しかもパーツの構成が変わるとポンプの流入量がリセットされます。例えばメモリを増設した場合や、あるいはただ単に外しただけでもリセットされます。そのたびにBIOSで調整をかけなれけばならず、大変不便でした。結果として本格水冷を止めようかという気持ちが高くなっていった矢先に本格水冷用のマザボが壊れてしまったので、もう本格水冷に戻る予定はないでしょう。

上記の理由に更に付け加えるとするならば、ユーザーが少なすぎるが故に冷却液が充実していないことです。はっきり書きますがPCの冷却液なんてゴミしかありません。各メーカーから冷却液という名前で販売されていたりしますが、ぼったくり価格のご祝儀のお値段です。ユーザーをなめきっている。足元見ている値段です。500mlで2,000円とか3,000円します。ペットボトル1本ぶんの値段で2,000円って馬鹿なんじゃないでしょうか。しかも最初にかった某サーマ●テイクの冷却液は内容物が沈殿するという意味の分からないクソ仕様でした。最初にチップセットに沈殿物が付着して、3年後の最後まで沈殿物がなくなることはありませんでした。このことからも、ユーザーが少なすぎる故にフィードバックが適切になされず、不具合が生じるという負のループになってしまっています。ユーザーが多ければメーカーもすぐに改善措置をとるでしょう。でも結局それが3年経ってもなされていないということは、メーカー側の姿勢もそうですが、ユーザーが少なすぎるのでおざなりにされているんです。色々頑張って調べた結果、最後は車のクーラント液を使っていました。PCの冷却液で車の冷却液っておかしくないかって話なんですが、これもメーカーの良さげな冷却液が見つけられなかったことが原因です。もしもう1回本格水冷をやるのでしたら、冷却液は色をつけた精製水を使うでしょうね。精製水で十分です。PC専用冷却液なんてぼったくりです。専用という言葉でユーザーを洗脳しようとしています。精製水ではなくともカーショップにいって車用の冷却液が1Lで600円前後で売っているのでそちらで十分です。

以上が本格水冷がうんちな理由ですが、良いこともあります。それはロマンです。というかロマンしかない。

本格水冷で組んだ自作PCを眺めて優越感に浸ったり、ちょっとだけ幸せな気持ちになったり、結局はそこなんですよね。個人的には得られるメリットよりも支払う対価のほうが大きいので本格水冷はお勧めしませんが、本格水冷でLEDで仕上げたPCがかっこいいのは納得できます。本格水冷で検索するとかっこいい自作PCの写真や動画がたくさん出てくるので、それを見てみると良いでしょう。たしかにかっこいいし、僕自信もそれに取り憑かれて本格水冷で自作PCを組んだ人間なので。ただ大事なのは、完成した時を見るのではなく、完成した後、その人がきちんと使っているかどうかを見ることです。個人的見解だと、半々くらいの確率でその後は使っていなかったりします。それくらいコスパは悪いということは重々に承知した上でその沼に足を踏み入れるかどうかを検討するべきしょう。

さて、マザボがお釈迦になってしまったので、急遽新たにPCを組むことになったのですが、そのことについて書くと更に長くなるので、ここで区切ります。次回は新たに組む自作PCについて書きます。

2022-11-08|
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