前回のインペラ手術から6日が経過しました。状況は一転して悪くなりつつあります。7月31日頃、父と面会をした時に担当のお医者さんから詳しいお話を聞かせてもらうことができました。お医者さんの説明をまとめると、以下の2点になります。
まず、肺水腫という症状が深刻化しています。肺水腫とは、肺に水がたまっている状態の事を言います。肺に水が溜まると、それが原因でうまく血液中の酸素の交換ができなくなります。父の身体にはPCPSという機械があり、それが半分くらい血液中の酸素交換を手伝ってくれているのですが、それを使ってもなお状況は悪くなっているということでした。肺水腫という症状が出始めたのは、父がICUに入ってから2週間が経過した頃です。しかしこの頃は、僕たちは肺水腫についての説明は受けませんでした。というのは、症状も軽微であり、医者が家族に説明をするほどでないと判断できる程度のレベルだったからです。しかし3週間が経過したあたりでしょうか、肺水腫の症状は進行し、4週間が経過した現在、素人の僕でもCTスキャンの映像を見てはっきりと分かるレベルになりました。この肺水腫という症状が改善されなければ、補助人工心臓を取り替える次のステップに進むことができないそうです。
次に、インペラの流量交換です。インペラとは、簡単に言えば心臓が血液を排出する動きを補佐する機械のことです。このインペラ手術をした一つの狙いは、先に書いた肺水腫の対策のためでした。しかしインペラ手術をして6日が経過してもなお、肺水腫は良くならないばかりか、徐々に深刻化しています。そこで今度は、インペラの流量そのものを増やす対策を取るということでした。父の身体にはインペラ2.5というものが入っています。これは1分間あたり2.5リットルの血液を補助するという意味です。これをワンサイズ大きめのインペラ5.0に変えるということでした。つまり1分間あたり5.0リットルの血液を補助する機械に変えるということです。その分だけ血液を補佐する流量が増えるので、心臓にかかる負担が減るという仕組みです。そうすると血液の循環が良くなり、結果的に肺に溜まっている水が減るのではないかという狙いです。
以上2点がお医者さんから説明されたことですが、ただし1点だけ付け加える形で、先生から深刻な話がある、と言われました。それは、もう取れる有効な対策手段が無くなってきているということでした。ここまで様々な薬や治療方法を駆使して命を繋いできたのですが、そろそろ有効な手札のカードが無くなってきています。端的に言えば、次に行う「インペラの流量を増やす方法」が上手くいかなければ、この後に切れる手札のカードがなくなるということです。強引に手術をして、新しい補助人工心臓を付けるという方法も無くはない――とのことですが、その分だけ身体にかかる負担は大きくなります。お医者さんの間で出された結論としては、父の状況では、この肺水腫の対策をしっかりやるしかないということでした。
肺水腫にも原因は色々ありますが、父の場合には心臓の血液循環が悪いことが原因です。ですから心臓の血液循環を改善しない限りは、肺水腫は良くなりません。しかし血液循環を良くする手立てがもう無くなってきているのです。PCPS、インペラ、強心剤、呼吸器…これだけの手段をとっても父の血液循環が良くならず、その結果肺水腫が進行しているということです。
ここまでの経緯をまとめます。
まず7月4日、拡張型心筋症である父の体内に埋め込まれている補助人工心臓に血栓がついて動かなくなりました。急に機械が故障したので、緊急手術という形で、それを取り替えるために、一度体外式補助人工心臓心肺装置(PCPS)に切り替えました。当初は、その間に古い補助人工心臓を取り出し、そして新型の補助人工心臓に変える計画でした。ただしすぐに新型の補助人工心臓に切り替えられる訳ではなく、新しい機械であるために、海外から先生を招いて手術を行なうそうで、その間はPCPSで過ごしてもらうとのことでした。
しかし手術から1週間後、状態が悪くなりました。敗血症という血液中に菌が検出される状態になったのです。抗生剤を使用して、徐々に菌の数は減り、敗血症から1段階マシなレベルである菌血症という状態になりました。7月14日のことです。
それから徐々に状態が良くなっていましたが、また状況が悪くなり始めたのが7月22日頃です。その頃には血液中に菌が検出されなくなったのですが、代わりに、父の肺に水が溜まっていることが判明しました。最初の頃は気にする程ではなかったのですが、少しずつその症状が悪化して、28日、それを改善するためにインペラ手術をしました。
そして8月1日、肺水腫という肺に水がたまる状態になっています。
次の手術が効果を発揮してくれることを祈るばかりです。